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滋賀県の女性経営者にインタビュー

2020.04.06

WRITTEN BY

りーしゅんライター

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滋賀の女性経営者インタビュー 07| 櫻井麗子さん(株式会社 真心.)

今、日本は65歳以上の高齢者が人口の21%以上を占める超高齢化社会。加えて少子化・核家族の増加により、介護事業へのニーズは年々高まっています。

また介護事業はAIでは成し得ない心配りを必要とする点から、将来性のある職業としても注目されています。

「株式会社 真心.」 が運営する「こころケアサポート」は、訪問介護事業・居宅介護事業・介護タクシー運営を柱とする大津市内にある高齢者施設です。

こちらの代表取締役を務めるのは、櫻井麗子さん。親しみやすい笑顔と話しやすい雰囲気で、多くの利用者から親しまれている櫻井さんですが、実は当初介護の仕事に対してあまりいいイメージは持てなかったのだといいます。

そんな櫻井さんが、どうして介護の仕事を選び起業を決意したのか、また櫻井さんを目覚めさせた介護の仕事の魅力について、moa編集部が取材に行ってきました!

介護の仕事のきっかけは、三男の言葉

「介護の資格をとったのは自分の意思ではなく知り合いからの勧めだったんです。親のためにとっておいたほうがいいよと言われ、無理やりとらされたという感じでしたね。」

と笑って話す櫻井さん。

資格を取得した当時の櫻井さんは、夫を亡くし3人の子どもを抱え、実母の飲食店の仕事をしながら家計を支えるシングルマザー。

当初はただ資格を取得しただけで、まさか介護を仕事にしようとは考えてもいなかったそうですが、

当時一年生だった三男の「僕が帰ってきた時、ただいまとお母さんに言いたい。おかえりと言ってほしい。」という言葉をきっかけに、短時間勤務で融通の利く、訪問介護ヘルパーへの登録を決意されたのだそう。

初めての担当

そこで櫻井さんが初めて担当したのは、障害を抱えた半寝たきりの状態で、自身では食事も自由にできない高齢男性でした。

けれどこの男性への介護経験が、櫻井さんの介護への概念を大きく変えてくれることとなりました。

奇跡の経験

移動が自由にできない男性を車椅子で押しながら、よく2人で買い物やお散歩へ出かけたという櫻井さん。

「無口な方でしたが、会話を重ねているうちに野球が好きだということが分かったんです。

甲子園へ行きたいと話されたので、ほんの軽い気持ちで『じゃあ歩けるようになったら一緒に行きましょう』と話して。

それが、数か月後のある日、お家へ行くと突然その方が玄関までスタスタと歩いて来られたんです!

その方は元々病院嫌いで、リハビリは自力でされている方でした。

けれども『甲子園へ行きたい。』という想いの強さで、病院に頼らずとも自力で歩けるようになられたんです。

『人って、気持ちがあれば奇跡を成し遂げることができるんだ。』と驚きと感動を覚えましたね。」

この経験を『奇跡の経験』と話す櫻井さん。

介護の魅力

その後、男性の念願は叶い、途中車椅子を利用しながらもお2人で甲子園へ行かれた櫻井さん。

奇しくもその試合は、今やスター選手であるダルビッシュ投手が出場されていた試合だったのだとか。

この経験から、関わりを通し、医療とは別の立場から利用者を支え、ときに医療でも成し得ない奇跡を目の当たりにできる介護へ、大きな魅力を感じた櫻井さん。

その後も職場を変えながらも五年間、介護の仕事に従事されました。

自身の迷いを振り切らせた介護の依頼

けれどその後、子どもたちの手が離れると、次第に別の仕事への興味が湧きだしましたといいます。

そんな櫻井さんを介護の仕事に留めるように舞い込んだ、知人からの介護の依頼

「実家の近所に、人見知りで話し相手の少ない方がおられて。私なら見られるんじゃないかと、その方のお知り合いに依頼されました。

もう辞めようかと思っていた矢先で正直迷ったのですが、私が見なければ誰が見るんだと思うとやっぱり放っておけなくて。結局引き受けてしまいました。」

思いがけず起業の道へ

起業を思い立ったのもこの時期でした。

「ちょうどその頃、自分で介護の事業所を立ち上げた友人がいて。その友人に、『あなたも自分でやってみたら?』と言われたんです。

起業なんて全く考えていなかったのですが、介護を引き受けた男性が奥様を亡くされた時期と重なって。

いよいよ本格的な介護をしてあげないといけないのに、施設が無くて。

男性を支えたいという想いで、施設を自ら立ち上げることを決意しました。」

こうして2008年、「株式会社 真心.」を起業。

好奇心とバイタリティーは生まれ持ってのもの

櫻井さん自身、元々起業には全く興味が無かったといいますが、そもそもの好奇心とバイタリティーは生まれ持ってのもの。

「高校三年の時、クレープ屋さんになりたいという夢があって。どうしたらなれるのか、京都にあるクレープ屋さんまで足を運んで店長さんに聞きに行ったんです。昔からチャレンジ精神は旺盛なほうでしたね。」

「母子家庭でも子どもに寂しい想いをさせないよう、常に子ども第一優先で行事への参加は事欠かさなかった。」という櫻井さんの大きな愛情を受けてきたお子さんたちも、様々な方法で櫻井さんの背中を後押しして下さったのだそう。

認知症となった母の介護を経験

こうして自ら経営者となり、介護の旗手を担うことになった櫻井さん。

経営者となってから大変だったことは、長年勤めてくれていたスタッフが「もっと密接に介護に関わりたい。」と施設を辞めてしまったときだったといいます。

またプライベートでは、実母の介護と死を経験。

介護状態となったのは、現在介護事由の疾病において上位に上がる認知症を患ったことからでした。

認知症は、記憶が徐々に衰退していくため、介護する側にも受け入れ難い部分が多くある病気だと言われています。

けれど櫻井さんは「認知症だから何も分からない、ということは決して無いんです。認知症の方でも、普通の人として丁寧に関わることが大切。実際に理解できることも、とても多いんですよ。」と話します。

生前の母との旅行で実感した、関わりの大切さ

実際に実母が亡くなられる前、家族で旅行へ行かれた際、そのことを深く実感されたといいます。

「5年前、母が無くなる前に家族でレンタカーを借りて旅行へ出かけたんです。

その旅行中、母はとても楽しんでいて、帰ってからもよく覚えていてくれました。

もちろん、所々記憶にちぐはぐな所もありましたが。

だけど、心を込めて関わるということ・現場主義でいることは介護にとってとても大切なことだと実感できましたね。」

櫻井さんのこうした想いは丁寧で細やかなサービスとなって現れ、多くの利用者やその家族に施設を愛される理由となっています。

悲しいけれど嬉しい、利用者の方々との思い出

その証拠に、この旅行からわずか三か月後、突然実母が亡くなられた時にも、お葬式の翌日に出社した櫻井さんを見て、

「こんな時に仕事に来たらあかん。何しにきたんや。」と言って、母を知らないにも関わらず泣いてくれた利用者がたくさんおられたのだそう。

「皆さんの想いが嬉しくて、一か月間は職場で泣き続けていましたね。ずっと支えてくれた母が亡くなったということは、私にとって大きな痛手だったので、一時期は仕事を辞めようかとも考えていました。

本当に利用者の方々に支えられて、苦しかったときを乗り越えられたのだと思います。」

介護タクシー

昨年から本格的にスタートさせた介護タクシー事業は、ご自身の家族旅行や他の利用者とのエピソードから着想を得たもの。

介護保険の範囲内でサービスを受けられる介護タクシーは国内でも多くありますが、病院の送迎など最低限の生活フォローに留まります。

けれど同社の介護タクシーは保険範囲外の『生きるうえでの楽しみ』に着目し、「桜が見たい。」や「お墓参りへ行きたい。」など、最低限の生活以上のフォローを叶えてくれます。

「私は若いうちに夫を亡くし、介護生活の末、母も亡くしました。でも、そのことから、人はいつ死ぬのか分からないということを学びました。

生きているうちに、少しでも笑顔を多く与えてあげてほしい。そんな想いから、介護タクシーをスタートさせました。」

介護タクシーは市外・県外の方も利用可能!

同社の運営する介護施設「こころケアサポート」を利用できるのは、地域の方限定ですが、介護タクシーは市外や県外の方でも利用できるとのこと。

高齢者のみでもご家族一緒でも利用できるので、多くの方に重宝されているそうですよ。

利用者への尊厳の想い

また利用者の方に対して、尊厳の念も抱いているという櫻井さん。

「何もない戦争の後の時代を生き抜いてきた方々ですから、本当にすごい方ばかりで。いろいろな知恵を持っておられて、学ぶことが多いです。

便利な時代の今の方からすると、介護されている中でびっくりするような面倒な家事のひと手間と遭遇することもあるようですが、

そこは今注目されている環境問題に目を向ける良い機会だと思って、自身の生活への良い刺激にしていってもらえればいいなと思います。」

介護の中でも、刺激が強く使い捨てになってしまうおしりふきを使用するのではなく、古いTシャツを活用することで、エコかつ利用者の肌への優しさも考慮しているのだそう。

今後について

今後について尋ねてみると、

「高齢化が加速し、介護制度が今後どうなっていくのかは分からない現状なので、自費で介護サービスを受けてもらいやすい仕組みを整えていけたらと思います。」

今後の介護業界を担う若い世代への期待も。

「若い方へもっと介護の仕事の魅力に気付き、興味を持ってもらいたいですね。

私自身、介護の仕事への興味は全くありませんでしたが、利用者の方と関わることで多くのことを学ぶことができましたし、皆さんが思っているより働き方の選択肢も多く、育児とも両立しやすい仕組みが整っていますよ。

介護の仕事は今後さらに需要を高めていきますし、資格はとっておいて邪魔にはなりません。勉強をすればするほど上を目指せるので、意欲を持ってこれからの介護業界へ臨んでいってもらえたら。」

と話されていました。

おでかけmoa読者へのメッセージを頂きました!

「昔は近所付き合いがあって、育児もみんなでしていた時代。けれど今は何でも夫婦でやっていかなくてはいけない大変な時代だと思います。

ただ、子育ては一瞬。子どもの成長は早く、関われる機会もほんの一瞬です。大変だけど楽しい時間を楽しんでほしいですね。

また、仕事だけでなく趣味も楽しんで、自分の人生を豊かにしていってもらえたら。」

自身も子育てを第一に生きてこられ、現在はかわいい孫のお世話も時折担当しているという櫻井さん。

最後まで、優しい笑顔で取材に応じて下さいました。

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りーしゅんライター

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